決してシステムに「全て」を委ねません
金のたまご農園の農園主です。
連載第8回のテーマは、「システムトレード」です。私たちは、日経225の複雑な市場で、いかに感情を排し、規律正しく取引を実行するかを考えてきました。その究極の形が、コンピューターに売買を任せるシステムトレードです。
システムトレードは、多くの伝説的なトレーダーたちが、その取引を補助し、効率を高めるために活用してきました。しかし、彼らは決してシステムに「全て」を委ねませんでした。
今回は、システムトレードの真の役割と、AI時代における「人間(農園主)」の果たすべき役割について深く掘り下げていきましょう。
1. システムトレードの『光』と『影』
システムトレード(自動売買)は、私たちの『金のたまご農園』に導入できる、最新鋭の『自動農具』です。
『光』:システムがもたらす規律と効率
- 感情の排除: 市場の急騰・急落時にも、システムは感情に流されず、事前に設定されたルール通りに淡々と取引を実行します。これが、人間の弱点である「欲」や「恐怖」を克服する最大の力です。
- バックテスト: 過去の膨大な市場データを使って、そのシステムが通用するかを事前に検証できます。これにより、戦略の優位性を数値で把握できます。
- 24時間監視: 人間が寝ている間も、市場の小さなチャンスを逃さず、取引を実行できます。
『影』:システムが超えられない壁
しかし、前回の連載でも触れたように、システムには大きな限界があります。
- カーブフィッティングの罠: 過去の特定のデータに過剰に最適化されたシステムは、未来の市場では全く通用しない可能性があります。これは、過去の天候にしか対応できない農具と同じです。
- 市場環境の変化: 新しい経済政策、技術革新といった「ゲームのルール」が変わる時、過去のデータに基づいたシステムは機能停止に陥ります。
- ブラックスワン: 誰も予想できないような未曽有の危機(パンデミック、大規模戦争など)が発生した場合、システムは適切に対応できず、致命的な損失を出す可能性があります。
2. 伝説のトレーダーが守った『聖域』:人間の役割
伝説のトレーダーたちは、システムの限界を知っていたからこそ、「人間が何をすべきか」という領域を明確に定めていました。
① ルールの『創造』と『停止』の決断
システムはルールを実行する専門家ですが、ルールそのものを創り出すのは人間の仕事です。
- 創造: 市場の本質、歴史、経済の背景を深く理解した上で、統計的な優位性を持つルールを設計します。
- 停止: システムが市場の環境変化に対応できなくなった時、「このシステムを停止する」という勇気ある決断を下すのは、人間の責任です。これは、農園主が、収穫期でないと知っていても、病気の蔓延を防ぐために作物を手放す、究極の判断力です。
② 資金管理という『神聖な職務』
システムは、資金管理のルール(例:リスクを総資産の1%に限定する)を与えられれば実行しますが、そのルールの厳格な維持は、人間の責任です。
- 実践: 証拠金維持率の監視、システムの最大ドローダウン(資産の最大減少率)の許容範囲の決定など、資金の配分と防御という、最も重要な職務は人間が行います。
3. AI時代における人間の価値:『相場観』という名の芸術
AIが進化し、より高度なシステムが生まれる現代において、人間の投資家が持つべき価値は、「AIが持てないもの」に集約されます。
- 哲学と倫理観: 自分の投資が社会にどのような影響を与えるかという哲学。システムに盲従しない、揺るぎない投資理念。
- 洞察力: 過去のデータにはない、未来のイノベーションや社会の大きな『潮流』を見抜く力。これは、データと直感を融合させた、究極の『相場観』という名の芸術です。
システムトレードは、あなたの投資を効率化する素晴らしい農具です。しかし、その農具を使いこなすのは、あなた自身という名の賢明な『農園主』でなければなりません。
次回予告: 【第9回】『複利の魔術師』の資金管理術〜投資資金、証拠金、利益をどのように再投資(複利)に回し、資産を加速度的に増やしていったかという、具体的な資金管理と配分のルールを紹介。
