勝率が低くても利益を生み続ける
金のたまご農園の農園主です。
連載第6回のテーマは、「勝率よりも期待値」という、プロの投資家が持つ最も重要な哲学の一つです。
投資で成功したいと考える時、私たちはつい「勝率が高い取引」を追い求めてしまいがちです。しかし、伝説のトレーダーたちは、勝率が低くても利益を生み続けるという、一見矛盾した事実を知っていました。
今回は、なぜ勝率が投資の全てではないのか、そしてその真の優位性を示す「プロフィットファクター(PF)」の概念について、深く掘り下げていきましょう。
1. なぜ「勝率」は投資の羅針盤にならないのか?
一般的に、勝率が高い取引は魅力的です。しかし、勝率だけを見ていては、あなたの『金のたまご農園』は破綻する可能性があります。
『小さな勝ち』と『大きな負け』の罠
- 事例: あなたの取引の勝率が90%だとします。10回の取引のうち9回は勝ち、1回だけ負けます。
- 9回の勝ち:すべて1万円の利益 (合計9万円の利益)
- 1回の負け:100万円の損失 (合計100万円の損失)
- 結果: 勝率は90%と非常に高いにもかかわらず、トータルでは91万円の損失となります。
この事例が示すように、勝率が高くても、一回の大きな損失がこれまでの利益を全て吹き飛ばしてしまうことがあります。これは、農園の小さな豊作が続いても、一度の『壊滅的な嵐』で全てが台無しになるのと同じです。
2. 真の優位性を示す羅針盤:プロフィットファクター(PF)
伝説のトレーダーたちが本当に重視するのは、「プロフィットファクター(Profit Factor: PF)」という指標です。
PFの計算式
PFは、以下の式で計算されます。
プロフィットファクター {総利益額} / {総損失額}
- PFが1.0:利益と損失が同額で、トントン(手数料は除く)。
- PFが1.0を超える:利益が損失を上回っており、優位性がある。
- PFが2.0以上:優位性が非常に高い。
先の事例でPFを計算してみましょう。
プロフィットファクター 9 / 100 =0.09
PFが1.0を大きく下回っているため、この戦略には優位性がなく、いずれ資金が枯渇することが分かります。
3. 『期待値』の哲学:「損小利大」こそ農園経営の真髄
プロのトレーダーは、PFの概念から「勝率よりも期待値」という哲学を導き出します。
哲学:『勝率』は低くても、『期待値』は高く
- 損小利大の徹底: 一度の取引で負ける額(損)は小さく抑え、勝つ額(利)は大きくする戦略です。
- 事例: あなたの勝率が30%と低くても、以下のようになります。
- 3回の勝ち:すべて50万円の利益 (合計150万円の利益)
- 7回の負け:すべて10万円の損失 (合計70万円の損失)
プロフィットファクター 150 / 70 =2.14
結果: 勝率は低いにもかかわらず、PFは2.14と非常に高く、トータルでは80万円の利益となります。
この哲学は、農園経営の真髄と同じです。大切なのは、「多くの作物を少しずつ育てること」ではなく、「一本の木が枯れても、一本の大木がそれ以上の実りをもたらす」ことです。小さな損失を恐れず、大きな利益を狙う勇気と、厳格な損切りによって小さな損失に限定する規律が、この哲学を支えています。
4. まとめ:『勝つ確率』より『残る利益』
投資で成功するための鍵は、感情を排して『残る利益(期待値)』を追求することです。
- PFを計算する: 自分の取引のPFを常に計算し、優位性があるかを客観的に判断しましょう。
- 損小利大の徹底: 損切りをためらわず、利益を伸ばす勇気を持ちましょう。
- 規律の徹底: この哲学を感情に流されずに実行する『心の強さ』こそが、あなたの『金のたまご農園』を豊かにする究極の武器となります。
次回予告:
【第7回】『価格の歪み』を見抜く裁定取引の眼〜オプション価格間の理論的な歪みを見つけ出し、リスクを抑えて利益を得る「裁定取引」の考え方を解説。
