〜投資におけるプロスペクト理論とは何か?〜
金のたまご農園の農園主です。
今回は、「投資におけるプロスペクト理論とは何か?」「特に含み損が出た場合にどう影響するのか?」というご質問をいただきました。日経225先物取引で10万円の含み損が出たケースを例に、具体的に解説していきましょう。
1. プロスペクト理論とは?
プロスペクト理論は、行動経済学の重要な柱の一つで、心理学者ダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーによって提唱されました。この理論は、人々が不確実な状況下でどのように意思決定を行うかを説明するものです。
その核心は、以下の2点にあります。
- 損失回避性: 人は、利益を得る喜びよりも、同じ額の損失を被る苦痛をより強く感じます。例えば、10万円を得る喜びが「1」だとすると、10万円を失う苦痛は「2」や「2.5」に感じられると言われています。
- 参照点依存性: 利益か損失かの判断は、絶対的なものではなく、「参照点(現状の資産状態や期待値)」によって変わります。
2. 日経225先物で10万円の含み損が出た場合
具体的な例で考えてみましょう。あなたが日経225先物取引で買いポジションを持っていたとします。しかし、市場が予想に反して下落し、現在10万円の含み損を抱えている状況です。
ここで、プロスペクト理論がどのようにあなたの意思決定に影響を与えるかを見てみましょう。
シナリオA:損切りをする場合
- 「10万円の損失を確定する」という意思決定には、非常に強い苦痛が伴います。
- プロスペクト理論の「損失回避性」により、この苦痛を避けたいため、「もう少し待てば戻るかもしれない」という期待に基づいた行動を取りがちになります。
- 結果的に、損切りを先延ばしにし、損失がさらに拡大してしまうことがあります。
シナリオB:回復を待つ場合(そしてさらに下落した場合)
- 「まだ損は確定していない」という心理が働き、参照点は「含み損が解消され、プラスになる状態」に設定されます。
- しかし、市場がさらに下落し、含み損が20万円、30万円と拡大していったとします。このとき、「これだけ損失が膨らんだのだから、今さら売るわけにはいかない」という心理が働き、損失を取り戻すための、より大きなリスクを取る行動に出ることがあります(例:追加で買い増しをするなど)。
- これは、損失が大きくなるにつれて、人はリスクを厭わなくなるというプロスペクト理論のもう一つの側面(価値関数が損失領域で凸になる)が働いているためです。
シナリオC:利益が出た場合との比較
- もし、あなたが日経225先物で10万円の含み益が出ていたとしたらどうでしょうか?
- 多くの人は、「利益がなくなるのが怖い」「利益確定したい」という心理が働き、比較的早く売却して利益を確定しようとします。これは「利食い千人力」とも言われますが、プロスペクト理論の「価値関数が利益領域で凹になる」という特性が働いています。
このように、プロスペクト理論は、含み損を抱えた状態では「損失を避けたい」という気持ちが強く働き、損失を確定することを先延ばしにし、かえって損失を拡大させる傾向があることを示唆しています。一方で、利益が出ている場合には、逆に「利益を逃したくない」という気持ちから、早く利益を確定させてしまい、大きな利益を取り逃がす可能性も示しています。
3. プロスペクト理論の罠を避けるための知恵
プロスペクト理論の罠に陥らないためには、以下の知恵が役立ちます。
- 損切りルールを徹底する: 投資を始める前に、「〇〇円下がったら損切りする」というルールを明確に設定し、感情に流されずに機械的に実行しましょう。
- 利益確定の基準も設定する: 同様に、「〇〇円上がったら利益を確定する」という基準も設けておくことで、早期の利食いを防ぎ、適切なタイミングで利益を享受できます。
- 長期的な視点を持つ: 短期的な価格変動に一喜一憂せず、長期的な成長を信じて投資を続けることが、感情に左右されない賢い投資の基本です。
- ポートフォリオ全体のバランスを見る: 個別の銘柄の含み損に囚われず、ポートフォリオ全体の資産配分と目標達成度を定期的に確認しましょう。
プロスペクト理論は、投資における人間の心理的な弱点を浮き彫りにします。この理論を理解し、自身の感情をコントロールする術を身につけることが、あなたの『金のたまご農園』を成功させるための重要な一歩となるでしょう。
この解説が、あなたの投資判断の一助となれば幸いです。また何かご質問があれば、いつでも【金のたまご相談室】にお寄せください。
